監修:藤井厚志(元KONAMI/著書『プロフェッショナルゲームプランナー』)
はじめに
「ゲームプランナーを目指しているけど、ポートフォリオって何を作ればいいんだろう?」
こんな疑問を抱えていませんか?
企画書なのか、仕様書なのか、ゲームそのものなのか——何を準備すればいいのか分からないまま、気づいたら応募書類の提出期限が迫っていた、という声をよく耳にします。
実は、ゲームプランナーのポートフォリオで見られているのは「アイデアの面白さ」ではありません。採用担当者が本当に確かめたいのは、「この人はどんな考え方をする人なのか」という一点です。
この記事では、元KONAMIのゲームプランナー・藤井厚志(著書『プロフェッショナルゲームプランナー』)の監修のもと、以下のことをまとめています。
- ゲームプランナーにポートフォリオが必要な理由
- 採用担当が「本当に見ている」ポイント
- 入れるべき3つの要素
- 自分のタイプ(トリガー・ドロワー・ドライバー)を活かした差別化術
- ポートフォリオの形式・見せ方
- よくある失敗と改善チェックリスト
未経験からゲームプランナーを目指す方も、転職活動中の社会人の方も、ぜひ最後まで読んでみてください。
目次
ゲームプランナーのポートフォリオとは
ポートフォリオとは、自分のスキルと実績を一冊にまとめた作品集のことです。就職・転職活動において、採用担当者に「この人は何ができる人なのか」を示すために提出します。
デザイナーや映像クリエイターにとってのポートフォリオは「制作した作品そのもの」ですが、ゲームプランナーの場合は少し異なります。プランナーは自分の手でグラフィックやコードを作るわけではないため、「どんな企画を考えたか」「どんな仕様を設計したか」「どんな思考プロセスを持っているか」をドキュメントで表現することが求められます。
具体的には、次のような資料がポートフォリオの中心となります。
- 企画書:「作りたいゲーム」のコンセプト・ターゲット・ゲームシステムをまとめた資料
- 仕様書:「どうやって作るか」を設計した資料。画面遷移・ゲームサイクル・パラメータなど
- ゲーム分析:既存タイトルを研究・分析した資料。ゲームへの理解の深さを示す
- 自己PR:自分のプランナーとしての強みや志望理由をまとめた資料
ゲームプランナーのポートフォリオに決まった形式はありません。だからこそ「何を・どう見せるか」の設計力が、そのままプランナーとしての実力として評価されます。
なぜゲームプランナーにポートフォリオが必要なのか

「成果物が見えにくい職種」だからこそ
ゲームプランナーという仕事には、他の職種にはない特徴があります。それは「自分の手で直接、何かを作っているわけではない」ということです。
ゲームデザイナーはイラストやUIで実力を示せます。プログラマーはコードやアプリで証明できます。しかしプランナーは違います。プランナーの仕事は「デザイン・プログラム・サウンド以外のすべての仕事をこなす人」(藤井厚志・著書より)。言葉とドキュメントが主な成果物です。
その分、採用担当者には「この人が実際に何を考え、何を作れるのか」が見えにくいのです。
だからこそポートフォリオが必要です。ポートフォリオは、プランナーにとって「自分の思考を可視化する唯一の手段」です。特に未経験・転職希望の方は、実務経験の代わりにポートフォリオで「考え方の質」と「実力の水準」を証明しなければなりません。
監修者・藤井厚志からひとこと
ポートフォリオを見るとき、私が最初に確認するのは「このゲームを誰に向けて作ったのか」という視点です。ユーザーが設定されていない企画は、どれだけ面白そうに見えても、現場では使えない企画として判断せざるを得ません。アイデアの斬新さより、読み手への配慮——それがポートフォリオの本質です。
採用担当が「本当に見ている」3つのポイント

ポイント①:ユーザー設定が明確か
採用担当者がポートフォリオを開いて最初に確認するのは、「このゲームは誰のためのものか」という点です。
「ゲームが好きな人なら誰でも楽しめます」という一文は、一見幅広い訴求に見えますが、現場では「誰のためでもない企画」と読まれます。ゲーム開発は、予算も時間もチームの人数も有限です。ターゲットを絞り込めていない企画は、「本当に作れる人なのか」という疑念を生みます。
採用担当者が見たいのは、次のような具体性です。
- 誰が:年齢・性別・ゲーム歴・プレイスタイル
- いつ・どこで:スキマ時間にスマホで?週末にテレビで?
- どんな不満を:今のゲームの何が物足りないか
この「ユーザー設定」が具体的であればあるほど、ゲームデザイン全体が説得力を持ちます。逆に言えば、ターゲットが曖昧な企画は、それ自体が「まだ考え切れていない」というサインです。
ポイント②:実現性と「もっともらしさ」があるか
「今までにないゲームを作りたい」という気持ちは素晴らしいものです。しかし、採用の現場では「斬新さ」だけを追った企画書は、むしろ警戒されることがあります。
理由は明快です。ゲーム開発はビジネスです。面白そうに見えても「本当に作れるのか」「作ってユーザーに刺さるのか」が見えない企画は、現場を動かす根拠になりません。
採用担当者が求めているのは、「どうやって作るか」のイメージが湧く企画です。参考にした既存ゲームを明示する、競合との差別化ポイントを言語化する、ざっくりとした開発規模感に触れる——こういった要素が「もっともらしさ」を生み出します。
ポイント③:ゲームへの理解の深さが伝わるか
採用担当者は、企画書の表面だけでなく、「この人はどれだけゲームを知っているか」を行間から読み取ろうとしています。
参考にしたゲームが適切に選ばれているか。ジャンルの文脈を理解した上でアイデアを出しているか。既存タイトルの「面白さの仕組み」をちゃんと分析できているか。
これらは、ゲームを「遊んだことがある」だけでなく、「なぜ面白いのか」まで考えてきた人にしか書けない内容です。
監修者・藤井厚志からひとこと
応募者の中には「斬新さ」だけを追求した企画書を持ってくる方が多いです。面白いアイデアが書いてあるのに、なぜそのゲームを作るのか、誰が楽しむのか、どうやって作るのかが全く書かれていない。現場のプランナーはアイデアだけでは動いてくれません。企画書は「人を動かすための道具」だということを、まず理解してほしいのです。
ポートフォリオに入れるべき3つの要素
ゲームプランナーのポートフォリオに必要な要素は、大きく3つです。
企画書(「作りたいゲーム」を伝える)
コンセプト・ターゲットユーザー・ゲームシステムの概要・他タイトルとの差別化ポイントを端的に伝える資料です。ボリュームはペライチ〜3枚程度が目安。「面白そう」で終わらず、「なぜ今このゲームが必要なのか」というビジネスとしての根拠まで踏み込めると一段上の評価を得られます。企画書の具体的な書き方は「ゲーム企画書の作り方」で詳しく解説しています。
仕様書(「実際に作れる」を伝える)
企画書が「何を作るか」を示すのに対して、「どうやって作るか」を示す資料です。ゲームサイクル・画面遷移・パラメータ設計など、実際の開発に使えるレベルで書かれていると評価が上がります。ボリュームは5〜10枚が目安。未経験者は既存ゲームの一部機能を仕様書として書き起こす練習から始めてみましょう。詳しくは「ゲーム仕様書の書き方」を参照してください。
自己分析レポート(「自分がどんなプランナーか」を伝える)
「自分がどんなタイプのプランナーなのか」「どんな強みを持っているのか」を自分の言葉で伝える資料です。影響を受けたゲームとその理由、ゲーム業界で解決したい課題、社会人経験とプランナーとしての強みの接続——これらを1〜2ページにまとめると、企画書・仕様書と組み合わせて「この人はどんな人間か」が立体的に伝わります。
監修者・藤井厚志からひとこと
企画書と仕様書、どちらを優先すべきか迷う方が多いですが、未経験の方であれば企画書の質を先に上げることをおすすめします。仕様書は企画書の方針が決まって初めて書けるものです。まずは「誰のためのゲームで、なぜそれが必要なのか」を一枚の企画書で伝えられるようにしてください。
👇藤井先生に直接相談してみる!24時間予約受付中!👇
👇ゲームプランナーになるために役立つ情報・ニュースをお届け!👇
自分の「プランナータイプ」を活かしたポートフォリオ差別化術

採用競争の中で差をつけるために有効なのが、自分のプランナータイプを意識したポートフォリオ作りです。
まずは自分がどのタイプに近いかを確かめてみてください。
診断結果が出たら、下の3タイプ別の戦略と照らし合わせてポートフォリオの構成を考えてみましょう。
プランナーの3タイプとは
藤井厚志の著書『プロフェッショナルゲームプランナー』では、ゲームプランナーは大きく次の3タイプに分類されています。タイプに優劣はなく、自分の傾向を理解した上で強みが伝わるポートフォリオを構成することが大切です。
- トリガー型:アイデアの発想力・ゼロイチの企画力が強み。「きっかけを作る人」
- ドロワー型:知識の幅と深さ・分析力が強み。「形にする人」
- ドライバー型:チームの推進力・着地力が強み。「完遂させる人」
トリガー型のポートフォリオ戦略
アイデアの発想力が強みのトリガー型は、「なぜこのゲームを思いついたのか」というストーリーを丁寧に見せることがポイントです。
日常の出来事・他ジャンルのエンタメ・既存ゲームへの不満——どこからアイデアが生まれたのかを明示すると、「この人はアイデアの根っこを持っている」と感じてもらえます。また、複数の企画書を入れてアイデアの豊富さを示すのも有効です。
注意点としては、アイデアの「実現性」を補う資料(参考ゲームの比較・ターゲット分析)を必ずセットで入れること。発想力だけでは「浮ついた企画」と見なされるリスクがあります。
ドロワー型のポートフォリオ戦略
知識の幅と分析力が強みのドロワー型は、「このジャンルをこれだけ深く知っている」という知識量を見せることが差別化になります。
好きなゲームを1〜2本選び、「なぜそのゲームが売れたのか」「どんな仕組みが面白さを支えているのか」を分析した資料をポートフォリオに加えましょう。ゲームの面白さをロジックで説明できる人は、仕様書の作成でも圧倒的に強くなります。
また、仕様書の細部まで作り込んだ完成度を見せることも有効です。「この人に任せれば仕様に抜け漏れが少ない」という安心感が採用担当者に伝わります。
ドライバー型のポートフォリオ戦略
チーム推進力と着地力が強みのドライバー型は、「プロセスを見せること」が最大の差別化ポイントです。
ゲームジャムやチーム制作の経験がある場合は積極的に入れましょう。「誰が何を担当したか」「どこで問題が起き、どう解決したか」「スケジュールをどう管理したか」というプロセスの言語化が、ドライバー型の強みを最もよく伝えます。
社会人経験のある方は、前職でのプロジェクト推進や調整の経験をゲームプランナーの文脈に翻訳して盛り込むのも効果的です。
監修者・藤井厚志からひとこと
自分のタイプが分からないという方は、「自分がゲームを作る上で一番楽しいと感じる瞬間はいつか」を考えてみてください。アイデアを出している時が楽しいならトリガー、ゲームの仕組みを考えている時が楽しいならドロワー、人に説明して動いてもらえた時が楽しいならドライバーに近いはずです。タイプはゲームでいえばジョブの違いのようなもの。どれが正解ということはなく、自分の個性を知ることがスタートです。
ポートフォリオの形式・見せ方・提出ルール

使用ツールの選び方
PowerPoint / Keynote:スライド形式で作るもっともスタンダードな方法です。ページ単位でレイアウトを組みやすく、図解・表・画像を使った資料との相性が良いです。PDF書き出しにも対応しており、提出形式を問わず使いやすいツールです。
Notion:Webで見せられるのが強みです。リンク共有で気軽に送れるため、メールでの提出よりも閲覧ハードルが低くなります。更新もしやすいので、フィードバックをもらいながら随時ブラッシュアップしていく使い方に向いています。
PDF(最終提出形式):どのツールで作るにしても、最終的にはPDFに変換して提出するのが基本です。フォントやレイアウトの崩れが起こらず、採用担当者の閲覧環境に依存しません。
推奨するスライド構成
| ページ | 内容 |
|---|---|
| 表紙 | 氏名・連絡先・作成日 |
| 自己紹介 | プロフィール・プランナータイプ・志望動機(1ページ) |
| 作品一覧 | 3〜5点の概要をまとめたインデックス |
| 企画書①(詳細) | コンセプト・ターゲット・ゲームシステム・差別化 |
| 仕様書②(詳細) | 仕様概要・画面設計・ゲームサイクル・パラメータ |
| 分析・自己PR | 好きなゲーム分析 or 前職経験×プランナーとしての強み |
ボリューム・ファイルの目安
- 全体:15〜25ページが読みやすいボリューム。これより少ないと内容が薄い印象を与え、多すぎると読んでもらえないリスクがあります
- 1作品あたり:3〜5ページが目安
- ファイルサイズ:20MB以内を推奨(メール添付でも問題ないサイズ)
- ファイル名:氏名と日付を含める(例:portfolio_yamada_20260601.pdf)
監修者・藤井厚志からひとこと
優れたポートフォリオに共通しているのは「読む人への配慮」です。何のためにこのゲームを作ったのか、見た瞬間に分かる。どのページを開いても自分のこだわりが伝わってくる。これはゲームの仕様書と同じです。相手が何を知りたいかを先読みして作られたポートフォリオは、必ず採用担当者の心に刺さります。
よくある失敗と改善チェックリスト
採用担当者が見てきたポートフォリオの中で、よく見られる失敗パターンをまとめました。提出前に必ず確認してみてください。
| よくある失敗 | 改善策 |
|---|---|
| ターゲットユーザーが書かれていない | 「誰が・いつ・どこで遊ぶか」を最初のページに明記する |
| 斬新すぎて実現性が見えない | 参考にした既存ゲームと、そこからどう発展させたかを1枚追加する |
| もっともらしさがない | 市場調査データや競合との比較を入れる |
| 企画書だけで「どう作るか」が伝わらない | 仕様書で具体的な実装イメージを補完する |
| 文字だらけで読む気が起きない | 図解・フロー・スクリーンショットを積極的に使う |
| 1作品に詰め込みすぎて散漫 | 1ページ1メッセージを意識して整理する |
監修者・藤井厚志からひとこと
GPCで企画書を見てきた中で最も多かった指摘は「ターゲットが曖昧」です。「ゲーム好きな人向け」「若者向け」ではなく、「20代男性で、スマホで週3時間以上ゲームをしていて、RPGが好きだけど重課金はしない層」まで絞り込むことで初めて企画に説得力が生まれます。ターゲットを絞ることへの恐怖は分かります。でも絞れていない企画は、誰の心にも届かないのです。
まとめ
ゲームプランナーのポートフォリオで本当に見られているのは、「アイデアの面白さ」ではありません。「この人はどんな考え方をするのか」「誰のために、なぜゲームを作ろうとしているのか」——その思考の質が問われています。
この記事のポイントを振り返ります。
- なぜポートフォリオが必要か:プランナーは成果物が見えにくい職種。ポートフォリオが「思考を可視化する唯一の手段」
- 採用担当が見る3つのポイント:ユーザー設定・実現性・ゲームへの理解の深さ
- 入れるべき3要素:企画書・仕様書・自己分析レポート
- タイプ別の差別化:トリガー型はストーリー、ドロワー型は知識と分析、ドライバー型はプロセスで勝負する
- よくある失敗:ターゲット不明確・斬新すぎ・もっともらしさ不足——この3つを避けるだけで上位20%に入れる
まずは1本、企画書を書いてみることから始めましょう。「誰のためのゲームで、なぜそれが必要なのか」——その問いに答えを持ち始めた瞬間が、プランナーへの第一歩です。
企画書の具体的な書き方は 👉 「ゲーム企画書の作り方」 で、仕様書については 👉 「ゲーム仕様書の書き方」 でさらに詳しく解説しています。合わせてご覧ください。
よくある質問(FAQ)
Q1. 未経験でもポートフォリオは作れますか?
作れます。むしろ未経験者こそポートフォリオが選考の合否を左右します。オリジナルゲームがなくても、既存ゲームの「改善企画書」や「一部機能の仕様書」として書き起こす方法があります。「マリオの1-1の仕様書を書いてみる」というような練習から始めてみてください。
Q2. 企画書と仕様書、どちらを先に作ればいいですか?
企画書が先です。仕様書は企画書の方針が決まってから書くもの。まず「誰に・何を・なぜ届けるのか」を一枚にまとめることを優先してください。仕様書はその後に「どうやって作るか」を詰めていくステップです。
Q3. 何点くらい作品を入れれば十分ですか?
2〜3点が適切です。数より質が重要で、1点を深く作り込んだほうが採用担当者の印象に残ります。入れる場合は「一番自信のある企画書を必ず1点目に」が鉄則です。
👇もっと藤井先生に直接質問してみたい!24時間予約受付中!👇
👇ゲームプランナーになるために役立つ情報・ニュースをお届け!👇